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「大丈夫だ。安心しろ。俺にはその手の欲求を満たす女が腐るほどいるからな。むしろその条件は、俺の方から提示したかったくらいだ。欲情して、俺に迫るような真似はするな、ってな」
「はぁっ? 何よそれ! なんかむかつく言い方ね」
「なんでだ?」
「私があんたなんかに欲情するわけないでしょ!」
「わからんだろ。俺様くらい魅力的な男になると、嫌でも女に好かれちまうもんでな」
バカだなぁ。
どうせ、お金目当てで寄ってきてる女の子たちばっかりだろうに。
「ちなみに、金は関係ないぞ」
考えが読まれたっ?
「俺が遊びに行くときは、身分を隠して偽名で遊ぶ。女たちは、俺を霧島尊流だと知らずに寄ってくるんだ」
「そ、そうなんだ……」
常に落ち着きを払った態度と口調。
みなぎる自信。
確かに、この姿に魅了される女子がいてもおかしくはない。
七咲君とは幼稚園からの幼馴染だって言ってたから、私と同い年か、違っても1コか2コのはずなのに、そうとは思えないオーラがある。
「そんなことはどうでもいい。俺は忙しいんだ。さっさと返事を訊かせろ。――さっきお前が提示した条件なら、もちろん問題ない」
「えっと……じゃあ……」
「早く言え」
普通に考えたら、断る理由なんてない。
私に手出ししてこないなら、単に割の良いバイトに過ぎないのだから。
必要な時に恋人として振舞い、たまにはデートもする。それだけで5000万円なのだ。
どこか釈然としないけど、借金返済のためにも、寧音のためにも、引き受けることにしよう。
そう心に決め、返事をする。
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