26人が本棚に入れています
本棚に追加
/93ページ
「ごめんなさい」
気付くと、私の思考を無視した言葉が飛び出していた。
ふと寧音へ目を向けると、「えっ?」と顔に書いてあるような表情をしている。
断る理由がわからない、ということだろう。
当然だ。私にだってわからない。
なんで断っているんだ、私は。
断ってしまった理由を頭の中で必死に探したけど、見つからない。
くすぐられたら自然と身もだえるように、体が勝手に反応してしまったとしか言いようがない。
霧島尊流を見ると、いつも通り無表情のままだ。怒っている様子もガッカリしている様子もない。
すると、その時だった。
「よし、合格だ」
霧島尊流が拍手をしながらそう言った。
「……は?」
「どんな理由があろうと、金で転ぶような上田サクラならば用はなかった。お前なら、一度は断るはず。そういうイメージだ」
「私の……イメージ……?」
やっぱり、この男は私を知っているんだ。
でも、いつ、どこで? 私の何を知ってるの?
最初のコメントを投稿しよう!