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【第6話】
翌日の夜。
私は、また妃花を飲みに誘った。
いろいろと意見をもらいたかったからだ。
定番の安居酒屋へ入り、霧島尊流の名前を伏せながら昨日の経緯を話すと、妃花はいつも通り興味があるのかないのかよくわからないトーンで訊ねてきた。
「妹の、寧音ちゃんだっけ? その子は、昨日のことについてなんて言ってるの?」
「寧音はノリノリなんだよね。『お姉ちゃん、絶対にあの人と暮らすべきだよ!』って力強く言われちゃった」
「ふーん」
「むしろ、『あの人は態度こそ冷淡だけど、中身は最高』なんて言ってる始末でさ。見事に篭絡されてるよ」
妃花は、無言のままハイボールのメガジョッキを口に運んでいる。
「私は断ったのに、強引に偽装婚約を進めようとする奴なんて信用できないよね? そう思わない?」
私の問いに対して、変わらず妃花は無言を貫き、お通しのレンコンおかか和えを堪能している。
「ねぇ、なんとか言ってよ。妃花はどう思う?」
「っていうかさ、もうサクラは答えを出してるよね」
「え?」
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