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しばらく無言で走り続けていたものの、段々と気まずくなり、間を埋めるための会話を始めてみる。
「あの、滝沢さんっておいくつなんですか?」
「僕は22歳です。尊流さんの2つ年上になります」
ということは、霧島尊流は20歳。私や七咲君と同い年だ。
とても同じ年齢だとは思えないあの落ち着きぶりを思い出し、改めて驚く。
「尊流……さんは、私と同い年だったんですね」
「そうです。見えませんよね? 尊流さんの風格やオーラは只者じゃありませんし。すごい方ですよ」
執事として仕えているから、というわけではなく、心の底から言っているように感じられた。
いろいろ訊きたいことがあったので、話を続ける。
「あのぉ、私と尊流さんの関係については、どこまでご存じなんでしょうか?」
「偽装婚約を含め、すべて把握しておりますので、ご相談などがあればお気軽にどうぞ」
「あ、そうでしたか……。では、あの……。政略結婚を阻止するっていっても、具体的に私は何をすればいいんでしょうか?」
「詳しい進め方については僕も聞いていません。そのうち、尊流さんから説明があると思います。基本的には、雫さんを始めとする関係者の皆様が諦めざるを得ないような形を作るのでしょう」
「雫さん?」
「西条雫さんです。西条電機創業者の一人娘の」
「西条電機って、あの西条電機ですかっ?」
「そうです。全国に800を超える店舗数を持つ、日本最大の家電量販店である、あの西条電機です」
霧島グループの御曹司の政略結婚相手なのだから、普通じゃないとは思っていたけど、やっぱり普通じゃなかった。
あの巨大チェーンの令嬢が相手だとは。
その間に、私なんかが割って入って大丈夫なのだろうか。
命の危険まであるんじゃ……。
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