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【第7話】
「遅かったな」
東京都港区の、どこからどう見ても『高級』としか言い表せないマンションの最上階(30階)にある一室に辿り着くと、霧島尊流が玄関で仁王立ちしていた。
「済みません。やや道が混んでおりまして、予定より3分も遅れてしまいました」
滝沢さんが、深々と頭を下げながら理不尽な謝罪をしている。
いやいや、車移動なら、交通事情によって数分遅れることなど当たり前だろう。
代弁しようかと思ったところ。
「やめろ滝沢。父と同じように接するな。遅かった、というのは挨拶がてらのジョークだ」
すぐさま霧島尊流がフォローに回った。
ジョークだったのか。
それに、『父と同じように接するな』ということは、霧島隆造は車移動におけるたった3分の遅刻を本気で許さないヤバい男なのだろうか。
他人のちょっとしたミスも重箱の隅をつつくように指摘する、絶大な権力を持った男、か……。到底好意など持てない。
「申し訳ございません」
「だから、それもやめろ。俺にはいちいち謝らなくていい」
「申し訳ございません」
身体に染みついているのだろう。
条件反射のように返答してしまっているように見える。
霧島尊流が、やれやれといった様子で首を振っている。
「ふぅ、まったく。――もういい。あとは俺の方でやっとく。明日、サクラの服を買いに行くから、昼前には迎えに来てくれ」
「わかりました」
え? 私の服?
キョトンとしていると、滝沢さんは私に一礼した後、足早に去って行った。
なんとなく霧島尊流の方へ首を向けると、目が合ってしまった。
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