【第7話】

3/6

26人が本棚に入れています
本棚に追加
/93ページ
 そういえば、もうそろそろ10月も終わる。  あと半年も経たずに高校卒業だ。  寧音、大学には受かるかな。  一生懸命勉強してるけど、報われるかな。  ――なんてことを考えている時だった。 「おい、ちょっといいか」  ノックと同時に、霧島尊流の声が聞こえてきた。  びっくりして、思わず両肩が上がる。  今は、この家に私と霧島尊流の二人きりのはず。  ……まさか、いきなり襲ってきたりしないよね?  あれだけ、私には手を出さないって約束したんだから、それはないよね?  でも、婚約者役として意図的に私を選んだことは間違いなさそうだし、もしかしたら変質的なストーカーだったのかも……。  政略結婚とか、すべてが嘘なのかも……。  急に思考が悪い方向へ傾く。  慣れない環境に身を置いているせいかもしれない。 「おい、いるんだろ。返事をしろ」 「あ、うん。いるけど。な、何……?」 「とりあえず入るぞ」  言うと同時に、霧島尊流は私の部屋へ闖入(ちんにゅう)してきた。 「……何をやってるんだお前は」  無意識に、そばにあった布団を両手で掴み、胸のあたりに当てていた。  女性が貞操を守りたいと強く願った時、自然とこんなポーズになるのかもしれない。
/93ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加