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そういえば、もうそろそろ10月も終わる。
あと半年も経たずに高校卒業だ。
寧音、大学には受かるかな。
一生懸命勉強してるけど、報われるかな。
――なんてことを考えている時だった。
「おい、ちょっといいか」
ノックと同時に、霧島尊流の声が聞こえてきた。
びっくりして、思わず両肩が上がる。
今は、この家に私と霧島尊流の二人きりのはず。
……まさか、いきなり襲ってきたりしないよね?
あれだけ、私には手を出さないって約束したんだから、それはないよね?
でも、婚約者役として意図的に私を選んだことは間違いなさそうだし、もしかしたら変質的なストーカーだったのかも……。
政略結婚とか、すべてが嘘なのかも……。
急に思考が悪い方向へ傾く。
慣れない環境に身を置いているせいかもしれない。
「おい、いるんだろ。返事をしろ」
「あ、うん。いるけど。な、何……?」
「とりあえず入るぞ」
言うと同時に、霧島尊流は私の部屋へ闖入してきた。
「……何をやってるんだお前は」
無意識に、そばにあった布団を両手で掴み、胸のあたりに当てていた。
女性が貞操を守りたいと強く願った時、自然とこんなポーズになるのかもしれない。
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