【第8話】

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【第8話】

 目を覚まし、すぐに壁掛け時計を見ると、午前7時を少し過ぎていた。  昨日は、夜10時にはもうグッスリだったので、たっぷり9時間以上寝た計算になる。  どんな悩ましいことがあっても、どんなに環境が変わっても、睡眠だけはしっかり取れるのが私の取り柄だ。  身体を起こし、伸びをする。  改めて部屋の中を見渡すと、お姫様に生まれ変わったのではないかと錯覚するほどだった。 「そっか。まだ7時か」  霧島尊流はまだ寝ているはず。  だったら、今からキッチンへ行って、冷蔵庫の有りものを使って朝食でも作ってみようかな。 ハイソなキッチンの使い方がわからないっていうのが微妙だけど、まあなんとかなるでしょ!  これで霧島尊流も、少しは私のことを見直すかもしれない。  ……いや、その辺がよくわからない。  霧島尊流の言動から、すでに私のことをある程度評価しているようにも思える。  うーん。  まあ、どうなるか予測できないけど、早めに起きた婚約者もどきが朝食を作っていたとしても、マイナスにはならないだろう。  なにせ5000万円もいただいた仕事だ。できるだけのことはしたい。
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