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【第9話】
「準備の方はよろしいでしょうか? 尊流坊っちゃんは、もう玄関でお待ちですが」
午前11時過ぎ。
ノック音の後、家政婦の園田さんの声がドア越しに聞こえてきた。
やっぱり行くのか。
朝食時の出来事によって、もしかしたら今日の外出はなくなるのかもと思っていたけど、杞憂だったらしい。
念のため、ちゃんと出かけられる準備をしといてよかった。
「あ、今行きます!」
愛用の白いトートバッグを手にして、椅子代わりにしていたベッドから立ち上がる。
「よし、頑張るぞ!」
声に出して、自分を鼓舞した。
霧島尊流と二人で服を買いに行くというミッションは、今回の契約における私の初仕事だ。
玄関に着くと、上から下までバッチリと決まっている霧島尊流が立っていた。相変わらず立ち姿がサマになっている。
「待ってたぞ。もう滝沢も下でスタンバイしてるから、早く靴を履け」
「うん、わかった」
促されるままに靴を履き、顔を上げると、霧島尊流は振り返りもせず玄関のドアを開け、どんどん歩いていく。
「ちょ、ちょっと待ってよ」
その後ろ姿を、早足で追いかける。
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