【第9話】

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 マンションの外へ出ると、車の後部座席のドアを開けて待っている滝沢さんがいた。  車に詳しくないので車種はわからないけれど、黒塗りのいかにも高そうな車だ。  ちなみに、ハンドルは右。高級車はすべて左ハンドル、という自分の無知さを胸の奥にしまいこみながら、霧島尊流に続いて後部座席へ乗り込む。 「それでは出発しますね」  運転席に座った滝沢さんが、真後ろにいる霧島尊流に確認する。 「ああ、頼む」 「表参道でよろしかったんですよね」 「ああ」  表参道!  名前はもちろん知っているけど、行ったことなんて当然ない。  私のような貧乏人が行ったら「分不相応罪」とかで逮捕されるんじゃないか、って思えてしまうほどに縁のない場所だ。 「どうせ初めてだろ?」  表参道と張り合うための覚悟を決めていると、霧島尊流が無骨に訊ねてきた。  私は、涼しい顔で受け流す。 「うん、多分初めてかな」  多分、と付けたのはせめてもの抵抗。だったのだが。 「何が多分だ。変なところでプライド持つな。素直に認めろ」  グサリとくる一言。  見事にバレてる……。  表参道到着前に、激しくライフを削られていくのがわかる。
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