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マンションの外へ出ると、車の後部座席のドアを開けて待っている滝沢さんがいた。
車に詳しくないので車種はわからないけれど、黒塗りのいかにも高そうな車だ。
ちなみに、ハンドルは右。高級車はすべて左ハンドル、という自分の無知さを胸の奥にしまいこみながら、霧島尊流に続いて後部座席へ乗り込む。
「それでは出発しますね」
運転席に座った滝沢さんが、真後ろにいる霧島尊流に確認する。
「ああ、頼む」
「表参道でよろしかったんですよね」
「ああ」
表参道!
名前はもちろん知っているけど、行ったことなんて当然ない。
私のような貧乏人が行ったら「分不相応罪」とかで逮捕されるんじゃないか、って思えてしまうほどに縁のない場所だ。
「どうせ初めてだろ?」
表参道と張り合うための覚悟を決めていると、霧島尊流が無骨に訊ねてきた。
私は、涼しい顔で受け流す。
「うん、多分初めてかな」
多分、と付けたのはせめてもの抵抗。だったのだが。
「何が多分だ。変なところでプライド持つな。素直に認めろ」
グサリとくる一言。
見事にバレてる……。
表参道到着前に、激しくライフを削られていくのがわかる。
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