【第10話】

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「ねぇ、どうだった? どうだった?」  店を出てからの開口一番、私は霧島尊流に味の感想を訊ねた。  本当は、チャーハンとサバ味噌煮を食べた瞬間にすぐさま質問したかったけど、変な意地で「まずい」みたいなことを言われて、それが店主の耳に届いてしまうことを恐れ、訊けずにいた。  ふぅ、と一つ息をついた後、霧島尊流が小さく漏らす。 「悔しいが、美味かった。まさか、サバの味噌煮とチャーハンが、あそこまでマッチするとはな」  きたっ!  一番欲しい一言をもらえた。  滝沢さんも追随してくれる。 「僕も美味しかったですよ。まさに新感覚ですね。味噌煮の濃さを意識してか、あえて淡白にしてあるであろうチャーハンとの相性が抜群でしたね。おそらく、チャーハン単体で頼む人や、ギョウザと合わせて頼む人には、もっとラードを使ってるんじゃないでしょうか」  超的確!  おっしゃる通り、ギョウザと一緒に注文すると、もっと油ギッシュなチャーハンがお目見えする。  チャーハンのお供によって、店主が味を絶妙に調節しているのだ。  説明するまでもなく言い当てられてしまった。  お腹いっぱいになった満足感。おすすめの店を認めてもらえた嬉しさ。  それらが相まって、幸せな気持ちに包まれながら、3人で車へと向かっていた。  ――その時だった。
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