26人が本棚に入れています
本棚に追加
/93ページ
「オラぁ!」
中華屋の正面にある居酒屋の前で、中年男性三人が一方的に若い男性を足蹴にしているシーンが目に飛び込んできた。
「なめんじゃねぇぞ!」
「殺すぞ、ボケがぁ!」
乱暴な言葉を使いながら、倒れ込んでいる若い男性を蹴りまくっている。
横には、彼女なのか友達なのか、眼鏡をかけた同年代の女性がオロオロしていた。
「なぁにが『一言謝れ』だ! カッコつけんな」
「ガキのくせに生意気なんだよ! ぶつかりたくなきゃ、女の方がよけりゃいいだろうが!」
罵声だけで、なんとなく状況が掴めてきた。
おそらく、中年男性三人組の誰かと眼鏡の女性がぶつかったものの、中年男性三人組はそのまま立ち去ろうとした。それを、若い男性が呼び止めたのだろう。
若い男性は、横たわりながらひたすら防御に徹している。
額からは、軽く出血もしていた。
気づくと、私の体は中年男性三人組の方へと向かっていた。
「ああっ? なんだこの女」
一番激しく蹴り上げていたスキンヘッドの男の足を掴み、顔を睨む。
息を嗅いだわけでもないのにわかるほど、かなり酒くさかった。
「やめなさいよっ! 酔っぱらってクダ巻くなんて、大人の男として恥ずかしくないのっ?」
「なんだとてめぇ……」
スキンヘッドは鬼の形相を浮かべながら、左腕を振りかぶり、私の右頬を強く引っぱたいた。
その衝撃で掴んでいた足を離してしまい、その場に倒れ込んだ。
「女ごときがしゃしゃり出てきてんじゃねぇぞ!」
女ごとき。
このスキンヘッド、私が一番嫌いな言葉を言った。
許せない。
最初のコメントを投稿しよう!