【第10話】

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「オラぁ!」  中華屋の正面にある居酒屋の前で、中年男性三人が一方的に若い男性を足蹴にしているシーンが目に飛び込んできた。 「なめんじゃねぇぞ!」 「殺すぞ、ボケがぁ!」  乱暴な言葉を使いながら、倒れ込んでいる若い男性を蹴りまくっている。  横には、彼女なのか友達なのか、眼鏡をかけた同年代の女性がオロオロしていた。 「なぁにが『一言謝れ』だ! カッコつけんな」 「ガキのくせに生意気なんだよ! ぶつかりたくなきゃ、女の方がよけりゃいいだろうが!」  罵声だけで、なんとなく状況が掴めてきた。  おそらく、中年男性三人組の誰かと眼鏡の女性がぶつかったものの、中年男性三人組はそのまま立ち去ろうとした。それを、若い男性が呼び止めたのだろう。  若い男性は、横たわりながらひたすら防御に徹している。  額からは、軽く出血もしていた。  気づくと、私の体は中年男性三人組の方へと向かっていた。 「ああっ? なんだこの女」  一番激しく蹴り上げていたスキンヘッドの男の足を掴み、顔を睨む。  息を嗅いだわけでもないのにわかるほど、かなり酒くさかった。 「やめなさいよっ! 酔っぱらってクダ巻くなんて、大人の男として恥ずかしくないのっ?」 「なんだとてめぇ……」  スキンヘッドは鬼の形相を浮かべながら、左腕を振りかぶり、私の右頬を強く引っぱたいた。  その衝撃で掴んでいた足を離してしまい、その場に倒れ込んだ。 「女ごときがしゃしゃり出てきてんじゃねぇぞ!」  女ごとき。  このスキンヘッド、私が一番嫌いな言葉を言った。  許せない。
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