【第12話】

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 それから、公園のベンチに座り、子供たちが走り回っている姿を見ながら一緒にお弁当を食べた。  二人とも、コンビニの幕の内弁当。  高級なレストランよりも、公園でコンビニ弁当を食べる方が全然楽しいし、美味しい。  しかも相手は七咲君。何も言うことはない。  食べながら、いろいろな話をした。  話題の中心は中学の頃の思い出だったけど、そこから派生して、中学卒業後どうしていたのかとか、趣味の話なんかもした。  七咲君は今、大学の法学部に通っていて、テニスにハマっているらしい。  さぞかし、素敵なキャンパスライフを送っているんだろうなぁ。  それから、話題は七咲君の生い立ちへと移った。  ここだ! と思い、以前から訊いてみたいと思っていたことを訊ねる。 「そういえば、尊流とはなんで知り合ったの? 幼馴染って言ってたけど、尊流は超ボンボンでしょ? 何がきっかけだったのかなぁ、ってずっと気になってたんだ」 「尊流、か。もう、そうやって呼んでるんだ」 「え?」 「いや、なんでもないよ」ニコリと爽やかに笑い、言葉を続けた。「俺が3歳くらいの頃に、親父が先物投資で大成功してね。それで、俺を超有名私立幼稚園に入れたんだ。金持ち御用達、みたいな幼稚園に。尊流とはそこで出会ったんだよ」 「へぇ、そういう事情があったんだ」 「ま、七咲家のバブルは続かず、俺が小学校3年生くらいの時に今度は先物で大失敗して、そこからは公立小学校に移って、そのまま公立中学に上がって、上田と出会う、ってわけ」  変な話、七咲君のお父さんが先物で成功し続けていたら、私は七咲君と出会えなかったんだ。  こんなこと思っちゃ悪いけど、お父さんにどこか感謝してしまった。
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