【第14話】

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「尊流の政略結婚の相手って、西条雫だろ?」 「な、なんでそれをっ……あ!」  ドンピシャで言い当てられてしまったことに驚き、思わず、認めるようなことを口走ってしまった。 「そうだったのか。あの西条雫か」  もう駄目だ。  今から誤魔化すことはできないだろう。  終わりだ。私は、契約違反をした。  帰宅したら、素直に尊流にすべてを話してから謝って、どんな処分でも受けよう。  もちろん、5000万円だって返す。契約を破ったんだから。  借金返済とかでだいぶ減ったけど、これから地道に働いて返済すればいいんだ。  私の神妙な面持ちを見てすべてを悟ったのか、七咲君が優しく語り掛けてくれる。 「政略結婚の相手、口止めされてたんだろ? だから、罪悪感に苛まれてるんだよな?」 「……」 「大丈夫だよ、上田。俺は誰にも言わない。そもそも、上田がペラペラ喋ったわけじゃないじゃん。俺が勝手に言い当てたことに驚いて、無意識に反応しちゃっただけだろ? そんなの、人間として自然なことなんだからしょうがないよ」 「な、七咲君……」  脳内での懺悔を暖かく包み込んでくれるような言葉に、目に涙が溜まる。 「泣くなって。上田は悪くない。これは間違いないことだから。ね?」  私の手を握りながら、この上ない優しいトーンで囁くように言ってくれた。 「ありがとう。本当にありがとう」  溜まっていた涙が次々と零れ落ちてきた。  泣くなと言われても無理な相談だ。  鬼のように怖い脅しを受けた直後の、初恋の人からの温かいフォロー。涙を流すためのお膳立てが整いすぎている。
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