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「それにしても、あの西条雫が相手となると一筋縄じゃいかないぞ」
「え?」
涙を拭いながら顔を上げる。
そうか、七咲君は西条雫とも幼馴染だったんだ。
となれば、その人となりもある程度わかるはず。
「俺は小3の途中まであいつと一緒の学校だったけど、とにかく性格の悪い奴だった。その後のことも、噂ではいろいろと聞いてる」
「西条雫の噂……?」
「ああ。俺自身は小4以降一度も会ってないけど、中学や高校でどんなことをやっていたのか、って話くらいは昔の友人伝いで耳にしてたんだ。だから、経済紙とかでたまに雫の顔写真を見るたびに、怖かったよ。あの涼やかな微笑の裏に、恐ろしい本性が隠れてるんだからな」
「恐ろしい本性って……。どういう人なのっ?」
「まず、自分が欲しいと思ったものは何が何でも手に入れるタイプで、邪魔する奴には容赦がない、っていう印象だね」
まさに、ついさっき西条雫本人が同じようなことを言っていた。
裏付けされてしまい、恐怖心がさらに高まる。
「高校の時なんか、雫が好意を寄せている男子に言い寄った女に対して徹底した嫌がらせをして、最終的にその子を自殺に追い込んだらしい」
「えぇっ? う、嘘でしょっ?」
「しかも、一応自殺となっているだけで、他殺の可能性もあるんじゃないか、なんて実しやかに囁かれてるよ」
「そんな……」
膝に力が入らなくなってきた。
よろけたところを、七咲君が素早く支えてくれた。
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