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「どうしたの? 浮かない顔して。これで問題解決だろ?」
「法的には問題ないのかもしれないけど、その、モラルっていうか……」
ふっ、と七咲君が軽く笑い、表情を崩した。
「相変わらずだな、上田。ホント偉いよ、そういうところ」
「そ、そうかな」
「そうだよ。この場面なら、法的に問題ないんだ! ラッキー! ってスッキリしちゃう奴の方が圧倒的に多いだろうに、上田は違うんだもんな。中学の時から、君はずっと真っすぐだ」
先程まで私の胸の中で渦巻いていたどす黒い気持ちが、スーっと晴れていくのがわかる。
うまく折り合いをつけられない生きづらい奴、なんて言われたことも少なくないのに、七咲君は「君はずっと真っすぐ」なんていう嬉しい言葉に変換してくれた。
心臓がバクバクいっている。もう少しで飛び出しそうだ。
「ありがとう、七咲君。本当にありがとう。すごく救われたよ」
「いいんだよ。どうしても譲れないことは、譲らなければいい。お金を返さないとスッキリしないなら返せばいいんだしさ。――でも、早くあの家から離れることについてだけは妥協しちゃ駄目だぞ。上田の身に何かあったらと思うと……」
何を言ってくれるの?
私の身に何かあったらと思うと何?
早く言って!
「……と、とにかく、頑張ってくれよな。上田に何かあったら、寧音ちゃんだって辛い思いをするんだからさ」
「――だね。わかった」
結局、決定的なことは言ってくれなかったけど、それでも私は満足だった。
こんなに幸せな気持ちに包まれたのはいつ以来だろうか。
それからは、特にこれといった会話をしないままお別れになっちゃったけど、私にとってはもう充分お腹いっぱいだった。
これ以上幸せをもらったら、精神的な幸せ太りをしちゃうかも!
そんなものがあるかは知らないけどね! えへ!
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