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「来たか。まあ、そこのソファに座れ」
尊流は、リビングにある大きなソファの上座に堂々と鎮座していた。
指定されたのは、尊流の真正面の位置にあるソファ。
もう覚悟は決まっている。
私は、契約を破棄してこの家を出ていく。
お金はもちろん返す。契約上問題ないとはいえ、返さないと気分的にスッキリしない。
すべてを手放す覚悟ができた今、怖いものも躊躇もなかった。
「なんだ。やけに怖い顔をしてるな」
「……別に。それで、用件は何?」
「ああ、そのことなんだけどな」
オホン、と一つ咳ばらいを入れる尊流。
なんだろう、いつもの無表情の中に、少しだけ緊張が混じっているように見える。
気のせいだろうか。あの尊流が緊張だなんて。
すると、尊流はおもむろに立ち上がり、少しだけ頭を下げ、すぐに戻した。
え? 何、今の? という私の動揺に追い打ちをかけるかのごとく、こんなセリフを吐いた。
「今日の朝食時にお前へ向けた暴言について、全面的に撤回し、謝罪する。申し訳なかった」
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