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「へっ……?」
「瞬に会いに行く、という話をしている時だ。お前に対して、このペチャパイだとか、貧乏人が偉そうなことをほざくなだとか言ったよな」
「……言われたね」
「それについて謝ってやってるんだ」
あの尊流が、気まずそうに私から視線を逸らしている。
なんて貴重なシーン! 写真撮りたいっ!
っていうか……なんか……かわいい……。
視線を逸らし続けながら、頬をポリポリと掻いた後、尊流が言う。
「いいか、こんな情けないことは二度と言わないからよく聞いとけ。――普段なら、あんなことで怒鳴ったり、汚いセリフを吐いたりはしない。でもな、あの時はつい……。『5000万円もらってるからある程度束縛されても仕方ない』みたいなこと、お前、言っただろ? あれで、なんていうか、お前に、あの上田サクラに、『金しか武器がないような奴』に思われたような気がして、つい逆上してしまった」
聞き間違いではないか? と思うような言葉の連続に、スティーブ・ジョブズの華麗なプレゼンを目の当たりにしているかのように聞き惚れてしまった。
まさか、尊流がそんなことを考えていたなんて。
ただただ、私を見下しての発言だと思っていたのに……。
暴言の理由について、大いに納得できた。
そういうことだったんだ。
お金持ちにはお金持ちなりの悩みがあるんだなぁ。
「あの上田サクラに」の意味をいい加減知りたいけど、どうせ答えてくれないだろうから、そこはスルーしよう。
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