27人が本棚に入れています
本棚に追加
/93ページ
とにもかくにも、尊流のたどたどしい説明に感動してしまい、私も本心を吐露することにした。
「私、尊流のことを『お金しか武器がない』なんて思ってないよ」
「そ、そうなのか……?」
尊流がやっとこちらを見た。
目と目を合わせ、真摯に伝える。
「うん。そりゃ、初対面の時はそれに近いことを思ってたけど、たった数日一緒にいただけでも、お金だけの人じゃないことは充分伝わってきた。私こそ、変な言い方してごめんね」
「あ、いや……」
貴重な『尊流氏の気まずそうな顔』第二章を見れたことで、私のテンションはさらに上がった。
「昨日、ハイキック一発で私を助けてくれた姿も、すごくカッコ良かったよ」
もちろん、これは本当のことだ。
ふと、あのシーンが頭に浮かんだのだ。
「……ふん」
いつもの仏頂面を作りながら、ようやくソファに着席した。
そんな姿を視界に入れながら、ふふ、と軽く笑った後に、ハッと思い出す。
そうだ。私は、尊流の家から出ていかなきゃいけないんだった。
じゃないと、西条雫からどんな攻撃を受けるかわからない。
七咲君とも、あれほど固く約束したんだった。
でも、言いづらい……。
せっかく良い感じで仲直りできたのに、このタイミングでどう切り出せばいいんだろう。
しかも、本心を言えば、今の尊流から離れたいとも思わない。
自然と、目線が下がる。
最初のコメントを投稿しよう!