【第15話】

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「どうした?」  さすが尊流だ。  感づかれないように、顔には微笑を貼り付けていたのに、すぐさま違和感をキャッチされた。  いや、別に、とにこやかに返すも、尊流の追撃は止まらない。 「嘘をつけ。今の仕草や表情の変遷は明らかに不自然だった。――何かあるんだろう」  自分は無表情のくせに、人の表情や気持ちを読むのはなぜこんなに上手いのだろう。 「大丈夫だよ。何も、ないから」 「……瞬と何かあったのか?」  どこまで鋭いんだ、この人は。  あっさりと、七咲君絡みであることが見抜かれてしまった。 「えっと……」  場つなぎ的な言葉を探すも、見つからない。  公園での出来事は内緒にする、って七咲君と約束したから、言うわけにもいかない。  どうしよう。 尊流との契約と、七咲君との約束。 どっちが重いんだろう。どっちを優先させないといけないんだろう。 段々と混乱してきた。 何が正解かわからない。 私には、どっちも重要なもの、としか思えない。 でも、黙ったままでいれば尊流を裏切ることになる。 じゃあ、どうすればいいの? わからない、わからない……。 「迷ってるなら、俺に話せ。それですべて解決する」  ソファに座ったまま頭を抱えて俯いている私の頭上に、混沌を切り裂くような天の一声が降ってきた。 尊流の言葉が、力強く私の心に響く。 「俺に任せろ。何も心配はない」  ああ、駄目だ。  私は、尊流のこの言葉に弱い。  だって、今のところ本当にすべてその通りになっているから。 「あのね、実は……」  気付くと私は、今日の昼に起こったすべての出来事を詳細に話していた。
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