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【第16話】
「なるほどな。ほぼほぼ理解した」
すべて聞き終えた尊流は、腕組みしながら小さく何度か頷いていた。
目をつぶり、何かを考えているようだった。
尊流の言葉を待っていると、とんでもない一言が飛び出した。
「結論から言うと、ほぼ間違いなく、瞬と雫はグルだな」
「はぁーっ?」思わず素っ頓狂な声を出してしまう。
「何をそんなに驚いている?」
「い、いや、な、何を言ってるのっ? 何をどうしたら、そういう結論が出てくるのよっ?」
これぞ狼狽、といった私の慌てぶりを、冷静に見つめる尊流。
「お前な、もっと人を疑うことを覚えろ。細かく観察して、深く洞察しろ。じゃないと、今回みたいに足元掬われるぞ」
「ちょっと待ってよ! なんで七咲君と雫さんがグル、っていう前提で話を進めてるの?」
「それ以外に考えられないからだ」
「な、何を根拠に……」
「知りたいか? ――まず、なんで雫は第四公園に来ることができたんだ? そこで待ち合わせていることを知っているのは、お前と瞬だけだ。なんで雫が知ってるんだ?」
「私がこのマンションから出てきたところを尾行されたからでしょ?」
「それはない。このマンションで、俺とお前が同棲しているのは秘中の秘だ。霧島グループの御曹司である俺が、万全の対策をしてるんだぞ」
「な、なるほど」
「滝沢も、尾行されていればすぐに気付く有能な男だ。だから、このマンションが雫側にバレている可能性はあり得ない。――今日の昼まではな」
「今日の昼までは?」
「ああ。今はもうバレている可能性が高い。お前の後をつけられていれば、それでおしまいだ」
「あ……」
そっか。
私は今日、行きも帰りも一人で電車移動だった。
であれば、尾行なんて容易いだろう。
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