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「どういうこと?」
なんで私が選ばれたのかという質問を繰り出すも、七咲君はいつも通り悠長。
「そこまではわかんないなぁ。尊流って、結構秘密主義なところもあるし。でも、やばい奴じゃないから、尊流が付き合って欲しいって言ってるなら、試しに付き合ってみてもいいんじゃないかな? 優良物件だし、俺としてはおすすめするよ」
間違ってはいないと思う。
優良物件なのは間違いない。
妙に目つきが鋭くてちょっと怖いけど、顔の作りとしては端正だし、スレンダーで背も高かった。
何より、裕福であるという点についても、親から受け継いだ借金の支払い、そして妹の生活費を稼がないといけないという私の立場からすると、少なからず魅力を感じてしまう。卑しい考えだとは思いつつも。
だけど、問題は人間性。
七咲君は『やばい奴じゃない』とは言っているけど、生まれながらのお金持ちっていうのは、何を考えているのかわからない。
偏見かもしれないけど、それが私の印象。
「あのさ、七咲君。私、今、誰か付き合っている人がいるわけじゃないけど、それでもやっぱり、いきなり知らない人とお金だけで付き合うっていうのはちょっと……」
思い浮かんだ言葉をそのまま垂れ流してしまった。
初恋の人が五年ぶりに登場、と同時に、疑似とはいえ、日本有数のお金持ちからのプロポーズ。
こんな異次元な状況に、私の脳内処理能力は限界に近い。
思考能力が限りなく低下していることを感じる。
そんな私の困惑など、意に介さず七咲君が言う。
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