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「おい、答えろ」
自分の世界から抜け出し、取り繕うように返す。
「でもさ、七咲君、彼女いるって言ってたよ? しかも、1年くらい付き合ってるって」
「その彼女とマンネリになって、新しい彼女を探してるっていう可能性は考えなかったのか?」
「それは……」
「もしくは、もともとお前に気があったけど、諸事情により手を出せなかった、とかな」
諸事情によって手が出せなかった?
それはないと思うけど……。
だって、中学のアイドルだった清宮先輩と付き合ってただけだから、特別な事情なんてないはず。
いくら清宮先輩のお兄さんたちが怖いからって、本気で別れたかったら何とかできるだろうし。
「わかんないけど、ないと思うよ」
無難な返答しかできない。
実際、何もわからないのだから仕方がない。
「そうか。まあいい。――で、瞬からは『早くマンションから出て行け』と言われてたんだよな?」
「うん、そう」
「どうするつもりだ? 俺なりの結論を聞かせてやったが、どう判断するかはお前次第だ。お前と初めて会った時に言った通り、俺は何も縛らない。出ていきたいと思ったら、いつでも出ていけばいい。しつこいようだが、金の返済も不要だ。お前が強引に返すと言っても受け取らない」
尊流は、主張していることが一貫してブレない。
こういうところは、本当にすごいと思う。
でも、本当に七咲君は西条雫と組んでいるのだろうか。
今のところ、尊流の想像でしかない。
説得力はあるけど、物的証拠は何もない状態だ。
結局、私の出した答えは。
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