【第16話】

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「おい、答えろ」  自分の世界から抜け出し、取り繕うように返す。 「でもさ、七咲君、彼女いるって言ってたよ? しかも、1年くらい付き合ってるって」 「その彼女とマンネリになって、新しい彼女を探してるっていう可能性は考えなかったのか?」 「それは……」 「もしくは、もともとお前に気があったけど、諸事情により手を出せなかった、とかな」  諸事情によって手が出せなかった?  それはないと思うけど……。  だって、中学のアイドルだった清宮先輩と付き合ってただけだから、特別な事情なんてないはず。  いくら清宮先輩のお兄さんたちが怖いからって、本気で別れたかったら何とかできるだろうし。 「わかんないけど、ないと思うよ」  無難な返答しかできない。  実際、何もわからないのだから仕方がない。 「そうか。まあいい。――で、瞬からは『早くマンションから出て行け』と言われてたんだよな?」 「うん、そう」 「どうするつもりだ? 俺なりの結論を聞かせてやったが、どう判断するかはお前次第だ。お前と初めて会った時に言った通り、俺は何も縛らない。出ていきたいと思ったら、いつでも出ていけばいい。しつこいようだが、金の返済も不要だ。お前が強引に返すと言っても受け取らない」  尊流は、主張していることが一貫してブレない。  こういうところは、本当にすごいと思う。  でも、本当に七咲君は西条雫と組んでいるのだろうか。  今のところ、尊流の想像でしかない。  説得力はあるけど、物的証拠は何もない状態だ。  結局、私の出した答えは。
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