【第17話】

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【第17話】

 このマンションへ引っ越してきてからの3日間は、まさに激動だった。  尊流と揉めたり少し理解し合えたり、表参道でフラフラになりながらショッピングしたり、七咲君からのお誘いがあったり、そこで西条雫が登場したり……。  しかもそれで終わりではなく、今現在は、尊流を信じればいいのか七咲君を信じればいいのかわからず、身悶えている状態だ。  そこで4日目である今日は、久々にリラックスしたいと思い、隣りにある寧音のマンションへ遊びに行くことにした。  今日は土曜日だから学校もないし、バイトも休みらしい。都合よく、バイトの先輩も今日は深夜まで帰ってこないとのこと。  無断で出かけるのもどうかと思ったので、一応尊流にはことわりを入れた。  昨日、変に西条雫について突っ込んで聞いてしまったことで、尊流との間には微妙に気まずい空気が流れていたものの、寧音のところへ行くという申し出には「ああ、行ってこい。むしろもっと行ってもいいんだぞ」と答えてくれたため、少し気まずさも解消された。  やっぱり、尊流を信じるべきなのだろうか。  あの尊流が私を騙しているとは到底思えない。  ――となると、やっぱり七咲君が……?  そんな複雑な思いを抱えつつ、午後1時頃に寧音のマンションへ訪れた。 「いらっしゃい、お姉ちゃん。やっと来てくれたね!」  笑顔全開で私を迎えてくれる寧音。  丸々3日間も会わなかったことなど、おそらくこれまでの人生において一度もなかったので、私も寧々に会えた喜びは一入(ひとしお)だ。 「ごめんね。本当はもっと早く来たかったんだけど、いろいろ忙しくてさ……」 「だよね。あの霧島尊流さんの婚約者になったんだから、忙しいのは当然だよ!」 「いや、婚約者の『フリ』ね。ここ大事だから」 「あはは、そうだったね。とりあえず、早く上がってよ」  寧音のテンションがやたらと高い。  私に会えた喜びが爆発しているようだ。  当然、私だって嬉しくて仕方がないのだけれど。
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