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「どっちを信じたらいいかわからない、か」
スイーツ大会(?)開始から2時間後。
私は、今の自分の境遇について寧音に相談していた。
今となっては唯一の肉親である寧音。
まだ18歳とはいえ、幼い頃から私と一緒に苦労してきたこともあって、同年代の女子と比べれば成熟している印象がある。だからこそ、何か良いアドバイスをもらえるのではないか、という期待を持って打ち明けてみたのだ。
もちろん、西条雫の名前は伏せている。「とある令嬢」とだけしか言っていない。
寧音の真剣な意見を訊くため、私の心境を正直に伝える。
「私としては、尊流も七咲君も、どっちも疑う気になれないんだよね。二人とも、理に適ったことを言っているとしか思えなくてさ」
寧音が首を捻りながら言う。
「そうかなぁ。私からすれば、七咲先輩の方が若干怪しいように思えるけど。尊流さんの言ってることの方がまともな気がする」
意外な答えが返ってきた。
私はむしろ、七咲君寄りで話していたのに、なぜそうなるの?
そんな疑問をそのまま口にする。
「なんでそう思う?」
「なんで、って聞かれると困るけど……」
目の前のイチゴ大福をフォークでへつりながら、寧音が続ける。
「尊流さんの言ってることに、非の打ちどころがないじゃん。お姉ちゃんと七咲先輩しか知らないはずの待ち合わせ場所に、その令嬢が現れたんでしょ? だったら、決まりじゃないの?」
やっぱりそうなのだろうか。
私としても、一番引っ掛かっている点がそこだ。
あの待ち合わせ場所は、盗聴や尾行がないという前提ならば、私と七咲君しか知らないはず。
でも、あの七咲君が……。
にわかには信じがたい……。
そんな思いに囚われていると、寧音がポツリと一言漏らす。
「でも唯一、その令嬢と繋がっているのが七咲先輩じゃない可能性があるとしたら……」
ここで、寧音が言葉を区切る。
何? そんなドラマみたいなことはやめて!
早く結論を言ってよ!
「いや、考えすぎかな」
「はぁ?」
我が妹ながら、ひどい寸止めを喰らったことで、責めるような「はぁ?」を繰り出してしまった。
「ごめん、お姉ちゃん。なんでもないや。忘れて」
「いや、無理だよ! そこまで言ったんなら教えてよ! 何か思いついたことがあるんでしょ? 別に秘密を暴露するわけじゃなくて、ただの予想だよね? だったら言ってくれてもいいじゃん!」
「まあ、そうなんだけど……」
「じゃあ教えてっ?」
「ええ……? まあ、いいけど。――その代わり、『あり得ない』とか『バカじゃないの』みたいなこと言うのはやめてよね」
「うん、そんなこと言わないから。早く教えて」
「じゃあ……」
それから寧音は、思わず『あり得ない』とか『バカじゃないの』と言いたくなるような予想を口にした。
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