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「今フリーなんだ? じゃあ大丈夫っしょ! 尊流、マジで悪い奴じゃないし、とりあえず付き合っておこうよ」
めちゃくちゃ後押しされてしまった。
否定して欲しかったんだけどなぁ……。
こんな時、相手に幻滅できれば少しは気が楽になると思うんだけど、七咲君のこういう、良くも悪くも大らかなところも昔から知ってるがゆえに、こんなことじゃ嫌いになれない。
なんて返事をすればいいんだろう。
お金のために婚約者のフリなんてしたくないし、第一いろいろ大変そうだ。
上流社会の人たちとの付き合いも生まれるんだろうし。
それに、もし叶うのなら、私は七咲君とお付き合いをしたい……。中学の頃の憧れである七咲君と……。
そんなことを考えていたからか、
「七咲君は今、彼女とかいるの?」
こんな一言が口からこぼれ落ちた。
言い終わった直後に、ものすごいスピードで顔が紅潮していくのがわかった。
何を言っているんだろう、私は。
あまりに特殊な状況に置かれたことで、軽く脳がバグっているのかもしれない。
慌てて取り繕おうとしたものの、七咲君は涼しい顔で言い放つ。
「俺? うん、いるよ。付き合ってからもう1年くらい経つかな」
「あ、そ、そうなんだ……」
がっくりくるセリフをさらりと言われてしまった。
「ま、とにかくさ」七咲君が立ち上がる。「考えておいてよ。付き合ってみて、嫌だったら別れればいいんだし」
「うん、そうだね……」
「あ、そうだ。一応、電話番号とLINEを教えておいてよ。何かあったら気軽に連絡してほしいし」
お言葉に甘え、七咲君と電話番号・LINEの交換をした。
中学時代の私がこのシーンを見ていたら、狂喜のあまり失神しているかもしれない。
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