【第2話】

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「今フリーなんだ? じゃあ大丈夫っしょ! 尊流、マジで悪い奴じゃないし、とりあえず付き合っておこうよ」  めちゃくちゃ後押しされてしまった。  否定して欲しかったんだけどなぁ……。  こんな時、相手に幻滅できれば少しは気が楽になると思うんだけど、七咲君のこういう、良くも悪くも大らかなところも昔から知ってるがゆえに、こんなことじゃ嫌いになれない。  なんて返事をすればいいんだろう。  お金のために婚約者のフリなんてしたくないし、第一いろいろ大変そうだ。  上流社会の人たちとの付き合いも生まれるんだろうし。  それに、もし叶うのなら、私は七咲君とお付き合いをしたい……。中学の頃の憧れである七咲君と……。  そんなことを考えていたからか、 「七咲君は今、彼女とかいるの?」  こんな一言が口からこぼれ落ちた。  言い終わった直後に、ものすごいスピードで顔が紅潮していくのがわかった。  何を言っているんだろう、私は。  あまりに特殊な状況に置かれたことで、軽く脳がバグっているのかもしれない。  慌てて取り繕おうとしたものの、七咲君は涼しい顔で言い放つ。 「俺? うん、いるよ。付き合ってからもう1年くらい経つかな」 「あ、そ、そうなんだ……」  がっくりくるセリフをさらりと言われてしまった。 「ま、とにかくさ」七咲君が立ち上がる。「考えておいてよ。付き合ってみて、嫌だったら別れればいいんだし」 「うん、そうだね……」 「あ、そうだ。一応、電話番号とLINEを教えておいてよ。何かあったら気軽に連絡してほしいし」  お言葉に甘え、七咲君と電話番号・LINEの交換をした。  中学時代の私がこのシーンを見ていたら、狂喜のあまり失神しているかもしれない。
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