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「あの、もしかしたらすごく失礼なことを言っちゃうかもしれないんだけど、怒らないでね」
「怒るわけないじゃん。俺が怒ったところなんて、見たことある?」
確かにない。
中学の頃から、温厚が服を着て歩いているような人だったっけ。
「ごめんね、変なこと言って」
「全然いいよ。――で?」
「あ、うん。――あのね、この前ここで七咲君と会った時に、西条雫に接触された話、したでしょ? 覚えてるかな」
「もちろん覚えてるよ。雫からひどい脅しをかけられて、怯えてたよな」
「うん。そうだったね。……それで、あの日のことなんだけど。――なんで、西条雫は、あの日、あの時に、この公園に、いたの、かな。私たちしか、待ち合わせのことは、知らなかった、のに」
たどたどしくも、何とか最後まで言えた。
軽く体が震えているのがわかる。
こんなにも良くしてくれている七咲君に対して、疑うような言葉をぶつけてしまう申し訳なさが引き起こしている現象だろう。
しかし七咲君は、平然と答える。
「ああ、不思議だよね。偶然にしちゃ出来すぎだし」
あれ?
まったく動揺してない。
というか、私が疑いを向けていることにすら気付いていない……?
本当に何も知らないから、疑われているとは微塵も思っていない、とか?
やっぱり、西条雫と通じているのは七咲君じゃない?
「もしかしたら、上田が家を出た時に、雫側の人間が尾行したのかもしれないね」
「それなんだけど……。尊流と住んでいる家については、ごく一部の人しか知らないみたいなの。だから、西条雫側の人間が尾行して待ち合わせ場所を特定するのは不可能だ、って尊流が言ってた」
「そうなんだ……。となると……本当に謎だよなぁ」
ここで、じっと七咲君の目を見てみる。
「ん? どうしたの?」
覚悟を決めて、核心をついてみることにした。
「……七咲君と西条雫って、幼馴染、だったんだよね?」
「ああ、そうだけど……。それがどう――」
ここで、七咲君の顔色が一気に変わった。
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