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「もしかして、誰かに『七咲が雫と繋がってるかも』って吹き込まれた、とか?」
「……」
ここで尊流の名前を出すのは憚られた。
すると……。
「尊流か?」
その言葉に、思わずビクンと反応してしまった。
心でも読まれたかのように、私の頭に浮かんでいた名前をそのまま言われてしまったのだから仕方がない。
私の反応を見た七咲君が、すべてを悟ったように呟く。
「そうか、尊流が俺を……そんなふうに思って……」
「で、でも! 悪気はないんだと思うの! ただ、私と七咲君の二人しか知らなかった待ち合わせ場所が漏れたっていう状況的に、七咲君じゃないか、みたいな……」
しどろもどろになっていると、不意に、真剣な眼差しを私に注ぐ七咲君。
「誓って言うよ。俺は、雫と組んだりなんかしてない。もちろん、あの日に雫を公園に呼んだりもしてない。絶対に、だ」
私の肩にそっと手を置きながら、力強い言葉で否定した。
なんて綺麗な瞳だろう。やっぱり、嘘を言っている人の瞳とはとても思えない。
「そうだよね。……七咲君のわけがないよね!」
確信した。
七咲君じゃない。
これはもう決定事項だ。
私が疑うような素振りを見せた時も、全然ピンと来てなかった。
心当たりがあれば、少しくらい態度に出るはずだ。
それに、七咲君が西条雫とグルになる理由がない。
尊流は、七咲君が私のことを狙っているからだ、なんて言っていたけど、だったら最初から尊流と私を引き合わせたりはしないだろうし、そもそもあの七咲君が私に、なんてことあるわけが……。
とにかく! これで私の腹は決まった。
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