【第19話】

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 ホッとした様子で七咲君がぽつりと漏らす。 「ありがとう、信じてくれて嬉しいよ」 「ううん。本当にごめんね、疑ったりして」 「大丈夫だよ。誤解が解けたんならそれで充分だ。――でも、謎は残ったままだよね」 「誰が、待ち合わせ場所を西条雫に漏らしたか、ってこと?」 「そう」 「うーん……」  確かに、それだけが謎だ。  七咲君じゃないとすると、一体誰が……?  それに、何の目的で……? 「あのさ、上田。答えられる範囲でいいから教えてくれないか。口止めされてたり、言ったらまずそうなことは伏せてくれて大丈夫だから」 「あ、うん。わかった……」 「尊流の家の場所を知っている人間は何人いる?」 「えっと、確実なのは、尊流と私と、住み込み家政婦の園田さんと、執事の滝沢さんと、あと妹の寧音、の5人かな」 「なるほど……」  七咲君は、腕組みしながら思案に暮れている。 「どうしたの?」 「……いや、雫が俺たちの待ち合わせ場所を知ってた件なんだけど、俺はやっぱり、誰かが上田を尾行して、雫に知らせたんだと思う」 「尾行して場所を知らせる……。でも、誰が? 尊流本人はもちろん、尊流が誰かにやらせたっていうことはないよね。わざわざ偽装婚約をバラすようなものだし」 「ああ、尊流はあり得ない。家政婦の園田って人もないだろうな。住み込みってことは、尊流に無断で長時間家を空けることなんてできないはずだから」 「そうだよね」 「……ちなみにその日、執事の滝沢って人はどこにいたの?」 「えっ?」 「家にいた?」 「いや、いなかった、けど……」 「その滝沢って人は、偽装婚約のことももちろん知ってるんだよね?」 「知ってる、けど……もしかして、滝沢さんを疑ってるのっ?」  思わず顔を近づけながら、大きな声を出してしまった。  驚いたのか、七咲君が言葉に詰まっている。 「ねぇ、答えて!」 「……うん、疑ってる。今のところ、滝沢って人以外に該当者がいない」  なんということだろう。  寧音の予想と同じだ。  昨日の夜、『あり得ない』とか『バカじゃないの』みたいなこと言わないでよね、と前置きした後、寧音は滝沢さんの名を口にした。  七咲君じゃないのならば、他に該当するのは滝沢さんしかいない、と……。
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