【第20話】

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【第20話】

「尊流に対して、特別な感情が芽生えたりしてる……?」  七咲君の唐突な質問に、思わず固まる私。  尊流に対しての特別な感情、か……。ないと言えば噓になる。だけど、特別にもいろいろな種類があるわけで。間違いなく、単純な好意、という感情ではない。そういう意味で言えば、七咲君に対しての方がよっぽど特別な感情を抱いている。  どう答えていいかわからずに黙りこくっていると。 「いや、もし上田が尊流のことを好きになりかけてるのに、無理やり引き剝がすようなことをしたら悪いなと思ってさ。だったら、違う方法もあるんじゃないか、って」  どこまでも私本位で考えてくれる優しさに嬉しさを感じつつも、「なんでここまで?」という疑問がほんの少しだけ湧いた。そんなに私のことを心配してくれるのなら、そもそも私と尊流を出会わせなければよかったのに。  ……でも天然の七咲君だから、あの段階ではそこまでの考えに及ばなかったのかもしれない。 「どうなの、上田?」  そうだ、質問されている最中だったんだ。尊流のことをどう思っているか、って。  でも、どう答えよう。難しい。
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