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「お姉ちゃん、すごいじゃん」
七咲君が去った後、寧音が興奮気味に私の肩をゆする。
「すごいって、何が?」
「だって、霧島グループの御曹司からプロポーズされたんだよっ? すごすぎるよ!」
「あのねぇ……。話、聞いてたでしょ? 政略結婚を避けるための材料として利用されるだけなんだよ?」
「でも、お姉ちゃんが望めばそのまま結婚することもある、って言ってたじゃん! もし途中で別れたとしても、5000万円はもらえるんでしょ?」
「……って言ってたけど」
「そしたら、借金も返せるし、私のためにお姉ちゃんが頑張って働く必要もなくなるんだよ? 悪いことなんて何もないじゃん」
「うん、まあ……」
寧音の言う通り、借金だけでなく、寧音の学費も捻出しないといけない私は、働き詰めで稼いでいる。
平日の月曜から金曜の夕方5時まではコールセンター、それが終わったら夜10時まで清掃業、土日は新商品の試食や試飲といった単発のアルバイト。
私に休みなどない。
だけど、毎日休みなく働いても、月の収入は35万円を少し超える程度だった。
しかも借金の方はかなり金額が多いので、金利を下げてもらったとはいえ、返しても返してもほとんど元金が減らない。
寧音の学費も大変だ。
寧音は公立高校に通っているから学校にかかる費用はそこまでではないけど、高校3年生で大学受験をする予定だから、予備校代がかかる。
大学に入れば、さらにお金が必要だ。
寧音は、「お金が大変そうだから大学は行かなくていい」と言っているけれど、私としてはどうしても行かせたい。
私のような苦労をしないためにも、大学には是非行っておくべきだと思っている。
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