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【第21話】
しばらく続いた沈黙。
それから、滝沢さんがニコニコしながらゆったりとした口調で話し始めた。
「あ、七咲瞬さんですね。はじめまして。先ほど話題にあげていただいた滝沢です。どうぞお見知りおきを」
よく映画とかマンガで見るような、これぞ執事、というエレガントな仕草を繰り出す滝沢さん。手を胸に当て、軽く頭を下げている。
「あなたが……滝沢さん……」
いつもほんわかゆったりな七咲君が、珍しく動揺の色を見せている。さすがの七咲君も、疑いの目を向けていた人物にいきなり登場されると、こうなってしまうのか。
私たちが座っているベンチの2メートルほど後ろにある大きな木の陰から登場した滝沢さんは、ゆっくりとこちらに歩み寄ってきた。
「七咲さん、随分と見当はずれな推理、ありがとうございます。楽しく聞かせていただきました」
皮肉たっぷりな滝沢さんの言葉に、七咲君がどう反応するか興味深く様子を窺っていると。
「へぇ、見当はずれ、ねぇ」
負けじと、挑戦的な返答をした。七咲君の中では、滝沢さんへの疑惑がだいぶ深まっているようだ。
私は、言葉を発する方に反応して首を向けるだけの人形のような存在と化している。
「俺の予想のどのへんが見当はずれなのか、説明してもらっていいですか? 実際今も、こうして俺たちを尾行してましたよね?」
七咲君が先制パンチを放つ。
すぐさま滝沢さんが答える。
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