【第21話】

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「どうしました? 独断で動いた理由は?」 「……」 「なんで黙るんです? ただ、本当のことを言ってくれればいいんです」  何かを言いかけるように軽く口を開いては、思いとどまり口を噤む、という仕草を二回ほど繰り返した滝沢さん。 「答えられないんですか?」  犯人はお前だ! と言わんばかりの強い口調で、七咲君が滝沢さんを詰める。  確かに、本当に独断で動いたのだとしたら、その理由を説明できないのはおかしい。ここで黙ってしまえば不利になることは明らかなのだから、本当のことを言うべきなのに。  回答しないということは、何か言えない事情がある、と言っているようなものだ。  20秒ほど、無言のまま目を合わせ続ける七咲君と滝沢さん。  返答が期待できないと判断したのか、七咲君が私の方へ首を向ける。 「上田、やっぱりすぐにでも尊流の家を出るべきだ。いろいろ、わからないことが多すぎる」 「違う! ぼ、僕はっ……」  一歩こちらの方へ踏み出し、何か言いたげにしているものの、そのまま黙ってしまう滝沢さん。今まで抱いていた滝沢さんのイメージとのギャップがすごい。常に冷静沈着で、優しくて、気配りができて、何かとホッとできる存在で……。  でも今は、そんな姿からかけ離れてしまっている。どうしたんだろう。
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