宜しへ。

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『これは初夢だろうか?』  夢の中で、そんなことを考えた時。 ♪ベベン ベンベン(三味線の音) 初ゆへ〜 初ゆへ〜  いち富士に鷹さん茄子へ〜 怪しげな声で唄う者がいる。 『誰だ?』 ♪ヒョ〜ォ ベベン ベン のこころへ〜 へらへらぁ〜 頑張らないでぇ〜 へなへなぁ〜  夢から覚めてトイレに行き、用を足して水を流すと、その水音に混じり、またこんな音が聞こえてくる。 ♪ベベベンベンベン ィヨ〜〜ォ 天は自ら助くる者を助へ〜  空耳だろうか。  それとも日頃の妄想癖が高じ!  いよいよ正真正銘の ♪ランランランシン ♪ゴランシン の境地に達したか!  とりあえず朝ごはんを食べて落ち着こう。  今朝はパンにしようか、ご飯にしようか、迷いながら冷蔵庫を開けて中を覗いていると ♪ヒョ〜ォ ベベン 二兎を追うものぉ〜 一兎を〜 へらへら〜  またしても冷蔵庫の中から怪しい声が! 『ヤッベ〜 迷ってたら、どっちも食えなくなる。よし!ご飯をおかずにパンを食うぞ』  俺がトーストを焼きながら、ご飯に卵をかけている時。 ♪ベベベンベン ベベン 豪放磊落(ごうほうらいらく)ぅ〜 鷲は蝿を捕えへんでぇ〜  トースターのチリチリ音に混じって、そんな小難しい言葉が聞こえる。  ピロリ〜ン ピロピロピロリ〜ン  エブリスタの通知音が鳴りまくる。  まったく無視して卵かけご飯をおかずにトーストにかぶりつく。  ピンポーン!  今度は宅配便だ。  大きさの割に軽いダンボールが届く。  玄関に放置したまま朝メシを食い続ける。  世の中のタイミングに合わせてばかりいたら朝メシを食うタイミングがなくなる。  そう思い、堂々と落ち着いて、よく噛んでメシを食おうと思った時、栄養がドド〜ン!と炭水化物に偏っていることに気づき・・  愕然とした途端! ♪ベベン ベンベン ヒョォ〜ォ さてもさてもぉ〜 アワてるコジきは〜ぁぁあ もらいが少なへぇ〜  へ〜ぇ〜 なるほどぉ〜  とやらが〜  へらへら〜 ラララへ〜  メシを食い終わり、一眠りしてからトイレに起きた時、宅配便で届いた箱につまずく。  誰だぁ、こんな送ってきやがって!  差し出し人は・・・  友だちのユウ君かぁ  彼の『のへ〜っ』とした平和な空気が屁のように脳裏に充満する。  ダンボール箱の表面の角っこに鉛筆で薄〜く「これからも」と書いてある。  相変わらず天衣無縫な遊び心!  くそっ!  すぐに箱を開けたら負けな気がする。  それから何日か箱を放置していたら・・  箱のことなど忘れてしまった。  今日は資源ゴミの日だから、いつの頃からか玄関先に転がってるダンボール箱がジャマだから開けて片付けてしまおうと思い立つ。    面倒くさいが、いつか片付けなければ狭い部屋がますます狭くなる。    ピロリ〜ン ピロピロピロリ〜ン  相変わらずエブリスタの通知音が鳴りまくっている。 『そのうち開へ〜』  いくら通知が溜まっても部屋が狭くなる訳じゃあるまへ〜  それがのこころへ〜  とは言えダンボール箱はさすがに開けて片付けてしまへ〜  と、箱の表面に手をかけた瞬間!  ドキドキが止まらない。  まさか箱の中で、モノが腐ってカビカビになってはいまいか。  まさか箱の中で、モノが萎びてヘナヘナになってはいまいか。  まさか箱の中で、何かが繁殖して凄まじい世界が構築されてはいまいか。  まさか箱の中で、美女が王子様を待ち侘びて婆さまになってはいまいか。  いろいろ考えると急に不安が押し寄せる。  こんなことなら届いたらすぐ開けてしまえばよかへ〜 ♪ベベベンベン ベベン 後悔先に立たヘ〜んて 海(ひろ)くして魚の踊るに(まか)せへ〜んと  仕方がない。  俺は清水の舞台から飛び降りる覚悟で!    ダンボール箱を開けてみたぁ。  すると!    無駄に大きな空間に半紙が一枚。  ヒラッと入っていた。    907cd57f-6031-4caf-b2e5-c32d778378cf  へへへへ・・・      了
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