◆2.蛮族の嫁

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◆2.蛮族の嫁

◆2  10年前。 「父上! 父上!?」  馮寶は、どかどかと、部屋に入って来た。  馮寶の父、馮融(ふうゆう)は、書状を書いていた手を止め、振り向いた。 「なんだ? 騒々しい……」 「蛮族と私の縁談を勧めているというのは、まことですか?」 「ああ、そのことか……」  馮融は、筆を置いて、馮寶に向き合った。 「何故、私が異民族の娘などを妻にせねばならないのです!」「お前が馬鹿で、かの女性は強くて賢いからだ!」 馮寶は憤慨した。 「何をおっしゃっているのです! 蛮族の女が、この私より賢いなどと!」「様々な部族がひしめく、この辺境を治めるのは、容易なことではない。若くて見識のないお前には、必要なことだ。 はあ……お前にはもったいないくらいの女性だ。わしが、あと三十歳若ければ……」 「父上、ふざけないでください! 私のどこが、見識が無いというのです!」 「異民族というだけで、会ってもいない人間を蛮族呼ばわりする者の見識など、知れたものじゃ!」  馮寶は返す言葉を失った。 「何故、異民族というだけで、毛嫌いするのだ。まあ、会ってみないか?」「しかし……」 
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