海とあなたに恋をして

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そして、20年の月日が流れた。 立てかけられた大ちゃんの写真を見ながら、そんな過去の出来事を思い出していた。あの頃と変わらず、大ちゃんは写真の中でも笑顔だった。 「母さん、もう父さんの一周忌も終わったし、そろそろ好きなことやったら?」 「そうね……。ずっと落ち込んでる訳にもいかないわよね。あぁ〜お父さんに会いたいわ。そうだ、お父さんとの思い出の海に潜ろうかしら!」 「え、見るんじゃなくて、泳ぐの? 母さんが?」 そう言って、長男の奏多が驚いた様子で尋ねる。 「あら、もう50代目前で厳しいかしら?」 「昔に比べて体力は落ちてるだろうから、ちょっと心配だけど。でも、しっかり練習すれば大丈夫じゃない?」 そして奏多は写真の大ちゃんに向かって話しかける。 「父さん、まだそっちに母さんを連れていかないでくれよ? 海だなんて、本当心配だよ…。俺、もっとちゃんと親孝行したいんだからさ」 「やだ、まだ死なないわよ! ドルフィンスイムの夢だって叶えてないんだもの」 兄妹共にとても優しい子に育った。大ちゃんにそっくりだ。そしてまた、立てかけられた写真に顔を向ける。 (……海に行けば、あの頃の大ちゃんにまた会えるかしら?) そうして目を潰れば、あの(きら)めく水面(みなも)の”ケラマブルー”が広がる。 一緒にその時を過ごした大ちゃんの笑顔を思い出しながら、再び海の世界に想いを馳せた。 fin.
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