タマのポケット

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「春香ー!お母さん出掛けるからね!ちゃんと…あら、起きてたの?」 「うん。お弁当も作った。お母さんもよかったら持ってく?」 「どうしたの?…あ、分かった!何かいい事あったでしょ?」 「うん。あった」 「それは良かったわ!お母さんも嬉しい!」 「変な勘違いはしないでね。ほら、遅れるよ!いってらっしゃい」 いつもより時間に余裕が出来た朝は気持ちがいい。 ふと窓辺を見るとタマがいる。 「タマ、昨日はありがとう。心の霧が晴れたみたい」 太陽が気持ちいいのか見向きもしない。 「ちょっといい?イタッ」 お腹を見ようと触ろうとしたらガブリと噛まれた。いつものタマだ。 「私が元気になったからだね」 返事をするかの様に尻尾を一振りする。 「ちょっとだけ見せて」 噛まれそうになるのを避けながらお腹を覗く。 「ポケットは…ないか」 夢でもいい。こうやってやって気持ちが前向きになれたのは間違いなくタマのお陰だ。 「タマ、今日はまっすぐ帰って来るね。そうだ!お土産、買ってくるから楽しみにしてて!」 玄関を出て振り向くと、タマが部屋の中から見ていた。 「タマー、行って来まーす!」 明るい陽射しの中へ歩き出す春香の背中に、タマは一声、優しく鳴いた。
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