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告白
そして、気もそぞろに翌日の仕事をこなし、後片付けも終えて、ついに終業時刻となった。
優香さんは「お疲れさま」と言い、「お話あるんだっけ」と変わらずに花笑む。
何の話をするつもりか勘づいているだろうに、まったく華麗だよ、そのとぼけ方は。
ややして俺たちは、職場近くの公園に足を向けた。彼女は俺の三歩ほど後ろを歩く。五分とかからず着いた公園には、夜を薄い膜が包むような白さがおりていた。そこに立つ照明を、ぼやけた幾重もの光が抱き込んでいる。
幸いにして暑くもなければ寒くもない。ただ、俺はやや気分が高まっていた。対して、彼女が告白を予感し、それを断るつもりならば、相応の寒さや居心地の悪さはあるかも知れない。
「優香さん」
前を向いたまま、俺は立ち止まって話し出した。彼女は背後で、静かにそれを聞く。
「もう気づいてると思うけど、俺、今から告白します」
背後の彼女は小さく、
「うん⋯」
と言った。
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