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どのように言葉を選ぼうか、どのように情熱的に伝えようか、などとは微塵も考えてこなかった。出たとこ勝負だ。今この瞬間の想いを、俺はぶつけていく。
「優香さんは、花笑みって言葉知ってますか。大和言葉です。花が咲くように微笑む人、って意味です。あなたは俺の中で、花笑みの人でした」
返事はない。でも、確かに熱を感じる。優香さんはどんな顔をしているのだろうか。
「その花笑みに、俺は心地よい麻酔を打たれてました。これは恋です。俺はあなたに惹かれ続けてます。それほど優香さんの花笑みは、俺の心を掴んで離さなかった」
大きく息を吸い、ずるいけれど、前方の空間に向かって言った。
「好きです。働き始めてから、最初から、好きでした」
沈黙があった。
張り詰めているようで、間延びしているような沈黙。
心が揺れているようで、微動だにしないような沈黙──。
意識せず、俺は息を止めていた。
そこでこの背中に、そっと触れる華奢な手があった。
「⋯慎弥くん、ありがとう。私のことを、そんな風に思ってくれて」
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