6人が本棚に入れています
本棚に追加
涙に濡れて
朝──人々の活動する前の静かな時間。頬を伝う温かい涙に少女は目を覚ました。
静かに目を開けば、視界に入ってくるのは白い天井と、カーテンから入ってくる淡い光。キンとした冷たい空気が肺に入ってきた。
まだ微睡みから抜けたくなくて、彼女は布団に潜った。
目を瞑れば頭に蘇るのは幸せな夢。もう会うことの叶わない、愛しい人。
──夢だと知ってたら起きなかったのに
それでも彼女は目覚めてしまった。夢の世界が終わり、現実に帰ってきてしまった。
もう一度、少女の頬を涙が落ちた。
──逢いたい
『思いつつ 寝ればや人の 見えつらむ 夢と知りせば 覚めざらましを』
最初のコメントを投稿しよう!