SCENE2

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「へぇ? そうなんだ?」  満留の言葉にそう返した私。それを見た満留と菖蒲は顔を見合わせた後で溜息を一つ。 「な、何よ? 変な事言った?」 「別に。そうだよね、この話、陽葵にしても意味無いよね」 「そうだよ。陽葵には一之瀬がいるもの」 「はあ?」  二人は面白く無さそうな表情を浮かべながら一之瀬の名前を出してくる。 「べ、別に、アイツは⋯⋯」 「はいはい、ただの同僚で仲の良い友達、なんでしょ? 分かった分かった」 「何でも良いけど、今の所うちの会社じゃ一之瀬が一番イケメンで仕事出来る有望株だもん、陽葵以外は近寄れ無かったからイケメンが来るのは嬉しいの! 分かる?」 「う、うん⋯⋯?」  何だか、一之瀬=私、みたいな方程式が出来上がっているのが何とも言えない。 (嬉しいけど、やっぱり何か複雑⋯⋯)  それから少しして始業開始の時間になった事で満留と別れた私たちは営業課のフロアへと戻り、午後の業務を開始した。  その日の仕事終わり、タイミングが被った私と一之瀬は当然一緒に帰る事になり、明日が祝日で仕事が休みという理由から飲みに行く事に。  駅近くにある馴染みの居酒屋に入り、ビールやおつまみが運ばれて来たタイミングでふと思う。 (そう言えば、彼女⋯⋯になってから飲みに来たのって初めてだな)  食事や私の部屋で過ごす事は数回あったけれど、こうして飲みに来るのは久しぶり。  思えばあの日、一之瀬の気持ちを知って流されるままに一晩を共にしてしまった事が全ての始まりだったけれど、後悔は無い。  私としては、自分の恋愛の在り方というモノを改めて考え直す良い機会になっていると思うから。 「そう言えばさ、一之瀬は知ってる? 近々他社から引き抜かれた有望な人が来るって話」 「ん? ああ、何か女子たちがそんな話してたよな。しかもそいつ、やり手な上にイケメンだとか」 「うん、そうらしいね」 「⋯⋯お前も、楽しみな訳?」 「え?」 「女って、仕事出来て顔が良い男には、興味が湧くモンだろ? だから、陽葵も興味あんのかなって⋯⋯」  飲み始めてから約一時間ちょっと経ち、昼間満留から聞いた話を一之瀬にしてみると、私がどう思っているのかを酷く気にしているようだった。
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