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「そんな事……急に言われても……」
「難しい事は聞いてないつもりだけど? 本條にとって俺は、ただの同期のまま? それとも、可能性ある? 期待して良い?」
戸惑う私に尚も答えを迫る一之瀬。
ただの同期かと聞かれると、それとは違うような気がするけど、恋愛対象かと聞かれても素直に頷ける気もしない。
だけど、もしここで「ただの同期」と答えた場合、一之瀬とはもう言い合いをしたり、ご飯を食べたり、飲みに行ったりする事は出来ないと直感する。
(……それは、嫌だ……)
何だかんだでいつも側に居て、当たり前のように言い合いをする時間は心地が良い。
それが無くなってしまうのは絶対嫌だったから、
「……私だって、一之瀬の事……ただの同期だなんて……思ってない……」
気付けば、そう口にしていた。
「この状況で拒みもしないどころか、そんな答えを出したお前が悪いんだからな?」
「……ッ」
言いながら右手を離した一之瀬は、その手で私の頬に触れた後で顎を軽くち持ち上げると彼の顔が再び迫り、
「――ッん、」
そのまま唇を塞がれた。
手を掴まれていたとは言え、答えを迫られた段階で力は緩んでいたから抵抗しようと思えば出来たし、もっと別の答え方があったと思う。
拒まなかったのも、期待させるような答え方をしたのも、キスを受け入れたのも、全ては私の意思。
もしかしたら私は、心のどこかで一之瀬のこうなる事を……期待していたのかもしれない。
「……っんん、……はぁっ、んッ」
初めは啄むような軽い口付けだったのに、私が拒まず受け入れていると分かったからか、それは徐々に激しさを増していく。
お酒なんて残っていない筈なのに頭はフワフワするし、頭のてっぺんから足の爪先まで、全てが熱を帯びているように熱い。
「……その表情、エロ過ぎ……普段からキスだけでそんな風になるんだ?」
「……ッそんな、こと……っ」
「これまでの男相手にもそんな顔してきたのかと思うと、スゲェ嫉妬する」
ようやく唇を離されるも、一之瀬の言葉と獲物を捉えるような鋭い視線に見つめられると鼓動は更に速まっていき、この先に何が起こるのかを密かに期待している自分がいた。
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