1914人が本棚に入れています
本棚に追加
「本條――いい?」
「…………」
一之瀬の『いい?』が何を意味するのか分からない程、子供じゃない。
頭では拒まなきゃいけないと分かっているのに、「駄目」の二文字が答えられない。
肯定も否定もしない私を前にした一之瀬は、
「今日だけは、酒のせいって事にしよう? 俺もお前も酔ってた、そのせいで、こうなった――ただ、それだけって事に」
優しく囁くような声でそう口にした。
私たちが酔ってなんかいないのは一目瞭然なのに、お酒のせいにするなんて……とは思ったけれど、もうそれでいいと思った。
だって何かを理由にしなければ、その先には進めないし、すっかり熱を帯びた私の身体はもう、一之瀬を求めてしまっているのだから。
答える代わりに小さく首を縦に振った瞬間、再び一之瀬は唇を塞いできて、さっきよりも強引な口付けをする。
「ッんん、……ふぁ、……ッ」
そして、両手で頭を撫でられたと思ったらその手は髪を掬いながら耳、首筋へと下がっていく。
「――っんん!?」
擽ったさに身を捩ると、今度は舌を強引に口内へ捩じ込ませてきて、キスは激しさを増していく。
勿論、ディープなキスなんて初めてじゃないし、これまで付き合った人とは何度も経験した。
けど、これまで経験したものとは比べ物にならない程、初めてキスが心地良いものだと思ってしまった。
(何これ……キスって、こんなに気持ちよくなれるもの、なの?)
それとも、やっぱり私はまだ、酔っているのだろうか?
(もう、どうでもいいや……)
そう思った私は自身の両腕を一之瀬の首へ回していく。
「本條って、結構積極的なんだな?」
「……こういうの、嫌?」
「本條がしてくれるなら、何でも嬉しいよ――」
「ッんん……」
なんて言うか、今目の前に居る一之瀬は、一之瀬じゃ無いみたい。
(一之瀬ってこういう時……すごく優しい顔するくせに、すごく……強引なんだ……)
再び口を塞がれ、何度も何度も角度を変えながらキスが繰り返される。
そして、何度目か分からない口付けの後、背中に回された一之瀬の両手に支えられながら身体を起こされ、向かい合う形になった。
最初のコメントを投稿しよう!