SCENE1

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SCENE1

 一之瀬と一夜を共にしてしまった後、二人して眠ってしまった私たち。  昼前くらいに目を覚ました時は、お互い何だか凄く気まずかった事を鮮明に覚えている。  あれから互いにシャワーを浴びた後、私を家まで送るついでと言って外で遅めの昼食を取ってから自宅まで送って貰って別れたのだけど、家で一人になってからもどうしていいか分からず時間だけが過ぎていった。  そして、休み明けの今日。  気まずい気持ちのままで出社した私は職員玄関のところで一之瀬と鉢合わせした。 「あ、お……おはよ……」 「ああ、おはよ」  いつも通り眠そうな一之瀬は軽く欠伸をしながら挨拶を返してくる。 (……あれ? 何か、いつもと変わらない?)  あんな事があったというのに何ら変わりない一之瀬の態度に若干拍子抜けした私は彼と共に中へと入る。  更衣室は三階にあるので二人でエレベーターに乗り込み、ドアを閉めた一之瀬は『三階』のボタンは押さずにそのまま『閉』のボタンを押した状態で一言、「あれから、考えてくれた?」と問い掛けてきた。 「……えっと、まだ……」  考えていなかった訳じゃないけど、私の中では数日で決められる事でもないから『まだ』と答えると、その答えが不服だったのか少し拗ねた表情を浮かべる一之瀬。 「……ごめん、やっぱりすぐには決められないから、まだ少しの間は保留にさせて欲しいの……駄目、かな?」  勢いで付き合って万が一駄目になって、お互い気まずくなるのは何よりも嫌だった私はもう少し考えたいからと返事を暫く保留にしたい旨を口にすると、「分かった。けど俺、今までみたいな『仲良しな同期』って立ち位置のままは嫌だから、積極的にアピールするつもり。それはいいよな?」なんて言いながらどこか意味深な笑みを浮かべていた。
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