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「この前送った時は昼間だったから気にならなかったけど、随分人気のねぇ道通って帰るんだな?」
「そうかな? まあ、住宅街だからね。どこも似たようなものじゃない?」
電車を降りてから少しして自宅アパートまでの道のりを一之瀬と共に歩いていると、あまり人が通らない道を通る事に驚かれる。
今までそんなに気にした事は無かったけれど、言われてみれば確かに、駅から離れて行くにつれて道幅も狭くなって、車は勿論だけど人もあまり通らない道かもしれない。
それでも、実家がある場所も似たような感じだったからか、さほど気にはしていなかった。
「いやいや、危険だろ? ところどころ『変質者注意』の看板だってあるし……つーか俺と飯食いに行った後とか飲みの後もこんな道通って一人で帰ってたのかよ……。お前だって女なんだから、危機感持てよな……」
「……ご、ごめん……」
「元カレだって部屋来たりしてたんだろ? 何も言わなかったのかよ?」
「う、うん……特には」
「有り得ねぇ……」
今まで何も無かったし、元カレもアパートに度々来ていたけどそんな事言ったりもしなかったから驚く反面、私を心から心配してくれているんだと嬉しくなって顔がニヤけてしまいそうになる。
「……何だよ、ニヤけてるぞ、顔」
「え!? あ、えっと、その……なんて言うか、一之瀬って結構過保護だなぁって」
「別に誰にでもって訳じゃねーよ。他でもない、お前だからだろーが」
「……そ、そっか……」
そこまでハッキリ言われてしまうと、それ以上何も返せなくなってしまう。
(やっぱり、一之瀬……変。本当、調子狂うよ……)
外気はそれなりに冷たい筈なのに、顔が火照っていた私の体温はどんどん上昇し続けていた。
「送ってくれてありがとう……あの、良かったら上がっていく? 大したもてなしは出来ないけど……」
あれから十分程経ってアパートに着いた私はお礼を口にすると同時に上がっていくかを聞いてみる。
けど、明日も仕事だし、あまり遅くなっても迷惑かと言ってから後悔したのだけど、
「……それじゃ、少しだけ上がってく」
少し悩む素振りを見せた一之瀬は上がっていくと言って私と共に中へ入った。
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