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「ちょっと散らかってるけど、その辺適当に座ってて。今コーヒー淹れるから」
「おー、悪いな」
いつもは結構散らかっているけど今日はそうでも無い室内。
荷物を置いた私は手洗いうがいを終えるとキッチンに立ってコーヒーの準備をする。
今思えば、随分大胆な事をしてしまったと改めて思う。自分から一之瀬を部屋に招き入れるなんてと。
一之瀬とは付き合いそこそこ長いけど、思えばお互いの部屋を行き来したのは今回が初めてだ。
先日一之瀬の部屋にお邪魔したのがそもそもの始まりだったけど、まさか、私の部屋に上がる日が来るなんて思いもしなかった。
(まあ今までは彼氏いたし、友達だったとしても、彼氏いたら異性を部屋に上げたりはしないもんね……)
そんな事を思いながらコーヒーをカップに注ぎ終えた私がトレーにカップと市販のクッキーをお皿に盛り付けたのを乗せて一之瀬の座るソファーの前に膝をついてテーブルにトレーを置いた刹那、
「……え?」
ふわりと優しく抱き締められた私の思考回路は停止し、一瞬何が起きたのか理解するのに時間が掛かった。
「……一之瀬……? な、にして……」
我に返った私は一之瀬に後ろから抱き締められている事に焦りと戸惑いを感じて退こうとしたのだけど手を振り解けず、どうすればいいのか分からなくなる。
「悪ぃ……なんつーか仕方ねぇ事だけど、この部屋に元カレ来てて、一緒に過ごしてたんだと思ったら……何か面白くなくて、ちょっと……嫉妬したし、金輪際他の男には取られたく無いって思いが余計強くなって……我慢出来なくなった」
そして、そんな言葉と共にソファーに座らされた私の上に跨るように一之瀬が覆い被さると、
「ちょ……っ、一之瀬……ッん――」
片手で顎をクイッと持ち上げられた私は逃げる間もなくそのまま口を塞がれてしまった。
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