プロローグ

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「そっかぁ……そうだよねぇ……」  いつもの私なら、一之瀬の返答に『何でそんな事言うの!? ちょっとはフォローしろー!』なんて言い返したり出来るけど、今日はそんな余裕も無くて、ここまで長続きしないとなると、相手云々よりも私自身に原因があるのだと自覚して更に落ち込んでいく。 「おい、そんなに落ち込むなよ? いつもの元気はどうした? そんなん、お前らしくねぇって」 「あのねぇ、私だって落ち込む事くらいあるよ? 元気なんて出ないよ……」 「ったく、調子狂うな。ほら、もっと飲めよ、な? 飲んで食べて、嫌な事は全部忘れちまえって。今日はとことん付き合ってやるからよ。何飲む?」 「…………そう、だよね。くよくよしてても始まらないよね……」  私を励まそうとしてくれているらしい一之瀬はいつもより優しく見える。  メニュー表を見せながらどのお酒を注文するか聞いてきたので、ジーッとメニュー表と睨めっこしつつ、「それじゃあ、梅酒ロック!」と答え、ひとまず気持ちを切り替える事に決めた。  そして、運ばれて来た梅酒を飲みながら、少し前に頼んであった唐揚げに箸を伸ばすと一つ掴んで頬張った。 「そうそう、それでこそ本條だよな」 「それ、褒めてる?」 「褒めてる褒めてる。つーかさ、さっきの話だけど、そもそも長続き云々より自然体でいられる相手ってのが一番なんじゃねぇの?」 「自然体……? 例えば、一之瀬とか?」 「俺かよ? まあ確かに、お前俺の前では遠慮ねぇもんな?」 「そうそう。なんて言うか一之瀬相手に作っても仕方ないし、面倒臭いもん」 「お前なぁ、それ本人前にして言う事かよ?」 「あ、傷付いた?」 「別に、どーでもいいよ」 「あはは、ごめんごめん」  よく考えてみると、一之瀬相手だと女らしくしようという思いよりも自然と自分を出してしまう気がする。
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