SCENE2

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「私が帰る時、もう帰社してたの?」 「ああ、ちょっと用あって総務に顔出してたから」 「そうなんだ」 「つーか、先に帰るなよ」 「ええ? でも、別に約束してた訳じゃないし⋯⋯」 「それはそうかもしんないけどさ⋯⋯待っててくれてるって、期待してたんだけど」 「ご、ごめん」 「まあそれは良いけど、今の男、何なの?」  待っていなかった事にも納得のいっていない一之瀬だったけれど、そんな事よりも先程の男性について気になっているようで相変わらず面白く無さそうな表情を浮かべながら再度問い掛けてきた。 「あの人は私が落としたパスケースを拾ってくれただけだよ」 「パスケース⋯⋯何だ、それだけか」 「何だと思った訳?」 「あー、何か親しげな感じだったから⋯⋯気になって⋯⋯」 「ふーん?」  ただパスケースを拾って届けてくれただけだと分かるや否や、どこか罰の悪そうな表情に変わった一之瀬は私から視線を逸らす。 「⋯⋯もしかして、ナンパでもされたと思った?」  コロコロ変わる表情が少し面白いのと可愛く感じた私がからかうよに問い掛けると、 「そうだって言ったら?」  からかわれた事が不服だったのか、またしても少し不機嫌さを滲ませながら質問を質問で返してくる。 「⋯⋯心配、してくれてるのかなって、ちょっと⋯⋯嬉しかったり?」 「何で疑問形なんだよ」 「だ、だって⋯⋯今までそういうの、された事ないから⋯⋯」 「お前、本当つくづく男見る目ねぇのな。普通好きな女が知らねぇ男に声掛けられるの見たら、気になると思うけど。ましてや『彼氏』なら尚更な」 「そ、そっか⋯⋯」  何ていうか、今の一之瀬を相手にするのは調子が狂う。  好きな人相手には結構独占欲強めのようだし、意外と心配性だったりと、本当に新たな発見ばかりだから。
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