プロローグ

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 一之瀬とは入社当時からよく話す仲だった。  私たちは城築広告代理店(きづきこうこくだいりてん)に勤務していて共に営業課所属なんだけど、同じ営業の仕事とあって何かと競い合っていて、そのおかげか成績も良く、私たちはそこそこ期待されていたりもする。  一之瀬はちょっと口は悪いけど、仕事は出来るし容姿も良い。  初めて見た時はイケメンだなぁ、なんて思ったりもした。  話してみると考え方とかが似ていてすぐに意気投合したし、同期の中では一番話しやすくて自然と一緒に居る事が増えた。  初めは仕事の事で相談し合いながらご飯に行ったりしていたのだけど、いつの間にか恋愛相談をするようになって飲みに行くようにもなり、あまりに仲が良いせいか周りからは付き合っているのかと聞かれる事も多々あったけど、私たちはそういうのとは違う。  あくまでも考え方が似ていて話も合う、ただそれだけの仲。同僚であり友達……親友……という言葉が合う存在なのだ。 「そういえばさぁ、一之瀬って彼女作らないの? もうずっといないよね?」 「あー、まあな。つーか恋愛面倒だし、俺は別にお前みたいにがっついてねぇからな」 「なっ! 私だって別にがっついてる訳じゃないし! ただ、忙しい中に癒しは必要でしょ?」 「それが恋愛だって?」 「そ。だってさぁ、恋してると身体の内面から綺麗になりたいって思うから、忙しくても自分磨きだって頑張れる」 「そういうモンかね?」 「そうだよ。だから一之瀬も彼女、作ればいいのに」 「いいんだよ、俺は。ほら、もっと飲め飲め」 「よーし! 今日は朝まで飲むぞー!」  一之瀬と居ると、ついつい時間を忘れてしまうし、何よりも楽しい。  共にお酒も強いから飲み友達としても最高の相手だ。  いつもなら店をハシゴするくらいに飲み歩くのだけど、今日は振られて凹んでいて寝不足だったのと、いつも以上にペースが早かったからなのか、段々眠くなっていく。  そして―― 「おい、本條? お前、酔ってる?」 「えー? そんなわけないよぉ? でもねぇ、すこーし、眠い……」 「あ、おい、本條?」 「……ダメだ……少し、すこーしだけ、寝る……おやすみぃ……」  急な睡魔に襲われ、瞼を開けている事すら出来なくなった私は「寝る」と言ってテーブルに突っ伏すと、そのまま瞼を閉じて以降の記憶が無くなっていった。
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