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「お前、もしかして……俺とどうにかなったのかって事……気にしてる訳?」
「――ッ!」
顔を近付けられて思わず大声を上げそうになったのをすんでのところで止めて、少し身体を後ろへ引く。
「ち、近い……よ……」
そして、小さい声でそう呟く私に一之瀬は、
「……阿呆か。酔っ払ってる奴を襲う程、困ってねぇよ。つーか、さっさと服着ろよな」
「痛っ!?」
意地悪な表情から一変、不機嫌気味な表情へと変えながら、おでこに指を弾くように当てながら一発強めのデコピンをされ、「あれは、お前が自分の服脱いだ後で――」そう切り出しながら、服を脱いでベッドに寝ていた経緯を話してくれた。
一之瀬の話によると、抱き着いて、「暑い」と口にした私は自身の服を脱いで下着姿になった直後、「私だけ下着姿とか恥ずかしい」と言って強引に一之瀬に迫った私が彼の服を脱がせて下着姿にした後、それに満足したらしい私が今度はベッドに一緒に寝ようと誘い、共に同じベッドへ入った瞬間、一之瀬に抱き着いて眠り始めた……というのが事の顛末らしかった。
(私、酔うと本当最悪じゃん……服を脱がせた挙句一緒に寝ようって誘うとか……何? 有り得ない……)
話を聞きながらとりあえずブラウスを着た私は、自分の酒癖の悪さに目眩を覚え、頭を抱える。
「……ごめん、本当に……申し訳ないです……」
こうなると一之瀬に非は無い訳で、当然私の方が平謝り状態。
そんな私に一之瀬は、
「いいって。気にしてねーから。それより、さっさと水分摂れよ? 頭痛てぇなら薬飲むか?」
気にして無いと言って私の身体を心配してくれる。
(何か、意外……一之瀬って、結構優しいとこあるんだなぁ)
いつも憎まれ口を叩き合い、時には愚痴を聞いてくれる一之瀬。
そして、酒癖の悪い姿まで見せてしまったのに、それでもいつも通りなところが嬉しかったりする。
「ありがとう……薬は大丈夫――っあ!」
ペットボトルの蓋を開けて水を飲もうとした私は手を滑らせて水をシーツにぶちまけてしまった。
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