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「冷たっ」
「ったく、何やってんだよ……」
「ごめん! シーツ濡れちゃった……どうしよ……」
「いいって、どーせ水だし、乾けば問題ねぇよ。それよりほら、足に水掛かったろ? これで拭いとけよ」
「ありがと……、本当にごめん……」
一之瀬からタオルを手渡された私は水を拭き取りながら迷惑を掛けっぱなしな事を申し訳なく思い、落ち込んでいく。
「何だよ、そんな顔して?」
「だって私、一之瀬に迷惑ばっかり掛けちゃってるから……」
「はあ? お前らしくねぇな。別に迷惑とか思ってねぇよ。つーかそんな風に落ち込まれると調子狂うし」
「落ち込みたくもなるよ……私、本当ダメダメじゃん。こんなだから、恋も上手くいかないのかな……」
酔って迷惑を掛けた事もそうだけど、恋愛が長続きしない事も自分に原因があるような気がするし、考えれば考える程自分が嫌いになりそうだった。
自己嫌悪に陥っている私に一之瀬は、
「男に振られたくらいで何だよ? つーかさ、浮気するようなクズな男になんか、振られた方が良いに決まってんだろ? 今回の事は寧ろ喜ぶべきだろ?」
いつになく優しく、励まそうとしてくれているのが分かる。
「……そう、かな?」
「そーだよ。長く付き合うだけ無駄無駄。別れられて正解。お前はラッキーだったんだよ」
「……そっか……そうだよね。うん、そう言われるとそうかも」
「ったく、世話が焼ける奴だな」
「ありがと、一之瀬! やっぱり一之瀬に話すと楽になる! いつも言い合いばっかりだけど、こういう時の一之瀬って頼りになるから助かるよ」
「そりゃどーも」
「一之瀬もさ、私の事、たまには頼ってよね? まあ、頼りないかもしれないけど……」
「そーだな」
「酷っ! そこは嘘でも『そんな事無い』って言ってよね」
「はいはい」
「もうっ! それはそうと、迷惑掛けちゃったのは確かだし、何かお礼しないとね。何かして欲しい事とかある? 私に出来る事なら何でもするよ?」
「何でも?」
「うん。ご飯奢るとか? あ! そういえば飲み代! 払ってない! いくらだった? 今払うね!」
何かお礼をと口にした直後、そもそも酔って眠ってしまった私は飲み代を払っていなかった事に気付き、今から払おうとバッグを取りにベッドから降りようとした、その時、
「――っ!?」
すぐ横に腰掛けていた一之瀬に腕を引かれた私はベッドへと戻される。
「……え?」
そして、そのままバランスを崩してベッドへ倒れ込んだ私の目の前には、一之瀬の姿があった。
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